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ポジティブの方法 その4

・ポジティブの方法における前置き4


ずっと集中している。視界の「丸」がぐっと狭くなっていく。それで集中しているものはよく見えてくる。顔が近づく。世界から音が消える。はっと顔を上げる。いっきに視界が広がる。そうして見える世界はさっきとは違って見える。一度視界が狭くならなければ見えなかった世界。それはたぶんラッキーの灯り。きっとハッピーの香り。そう思うことにした。そう決めた。そう決めたからそれはそうなるほかないだろう。


・渋滞


渋滞している。目の前に車が止まっている。その前にも車。その前も。その前も。後ろも車。その後ろも。その後ろも。動く気配もない。ガソリンも少しずつ減り始める。まだ残りの道のりは数十キロもある。幸い飲み物はある。飴もガムもある。しかし渋滞は動かない。そして思う。なんで動かないんだろう。と。こんなの不公平だと。このような渋滞の解消こそ税金を投入して対策をとるべきだと。動かない車のバックミラーに後続車の運転席が映る。男女だ。まだぎこちない親密さが見える。そういえばそんなこともあった。すっかり忘れていた。毎日が当たり前になっていたけれど。それは時間をかけて作られてきた当たり前だった。まるで少しずつ掘り進む木製の彫刻のように。まるで雨と灼熱の日差しの中の発掘調査のように。二度とない当たり前だった。大切な当たり前だった。車は動かない。それをいいことに運転席から窓の外を見る。雲が流れている。そうか。なんて幸福なんだろう。なんて幸運なんだろう。あなたがここにいるなんて。いたずらな妖怪が渋滞の仕掛けで教えてくれたなんて。渋滞が考える時間をくれたんだ。立ち止まる時間をくれたんだ。そんな渋滞の列は。少しずつ。流れはじめる。いつか。

2017.2.19 him&any

©2017 him&any




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