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桜守(さくらもり)


もう再開することはないかもしれない
その桜の下で
別れた

もう二度と会うことはないかもしれない
ふとそんな気がして
目を伏せた

二度とないということは
永遠ということだ

桜の木がバックミラーに小さくなっていく

その姿を見て
たくさんの別れを思い出した

いくつもの別れは
いつのまにか

今生の別れになっていく
気がつかないうちに

駅前に咲いていた
日なたに咲いていた
三分咲きだった

その桜にはきっと
目に見えない桜守がいる

このあたりでは
どこよりも早く花を咲かせる

ドアを開けたら
少し甘いにおいを感じた気がした

たぶん
その木の桜守が目の前を通ったのだと
そんな気がした

あの人の幸せを祈ろう

桜の季節は好きではなかったのに
今日の桜の色が
眩しくて

ふと心がほどけた気がした

心が
ほどけた気がした

空気が
やわらかくなった気がした

たぶん
その木の桜守が目に見えない何かで
心をほどいたのだと
そんな気がした

満開の桜だったらそんなことはなかった
たぶん

今日の日なたで
明るいあたたかさが
やさしかった

いくつもの別れを
かみしめた


2017.4.3 him&any


©2017 him&any


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