その曲がカーステレオから流れて
涙がこぼれた
不意打ちで心を打たれたように
ぽろぽろ
ぽろぽろ と
涙があふれた
深夜の高速道路からインターチェンジをおりて
最初の交差点
赤信号の曲がり角
誰もいない真っ暗なオフィスからの帰り道
行き止まりの風景をずっと見ていた
行き止まりの風景をずっと見ていた
そこには何もなかった
何もなかった
出口も 戻る道も 進む道も
逃げる場所も逃げる場所も逃げる場所も
何もなかった
ぎりぎりの心で
行き止まりの風景をずっと見ていた
このまま袋小路の中に包まれて
包まれて 包まれて
ただひとつだけ 見える光が
見えた光が
そこだった
だからそこに進むしかなかった
そこがどんな場所であろうと
だってここにいたら
もう行き止まりの中で袋小路の中で
ぎりぎりのその先へ超えて
こぼれ落ちていってこぼれ落ちていってしまいそうだから
深夜の真っ暗なオフィスで誰にも聞こえないため息をついて
心の無い心で 高速道路を滑るように走った
そして
その交差点で ランダム再生のカーステレオから
深い 深い イントロが流れた
音があふれた
心があふれた
彼らは歌っている
「自由だよ」と歌っている
涙があふれた
こぼれ落ちた
つぶやくように歌った
声にならなかった
「あなたは自由だよ」と彼らは歌っている
正しいのか 正しくないのか
それさえもわからない
もう わからない
でも
「自由だよ」と彼らは歌っている
そうか と 涙をこぼしたまま 信号が青になり
交差点を右折する
不意打ちのように 心を打った
今でも
正しかったのかどうか 分からない
けれど
行き止まりの風景から見えるものは
その風景の中にいる人しか
わからない
彼女も その光を 見たのかもしれない
彼らは歌っている 「あなたは自由」と
そして彼らも 前に進もうと 前に進もうとしている
今でも 立ち向かっている
彼らも 彼女も
とても遠くの場所にいるみたいだ
2017.2.16 him&any
©2017 him&any
コメント
コメントを投稿